礎

夢を見ました．

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友人と観光地に行きました．川辺で，船の珍しい操縦法が披露されていました．船尾に立って踊るんです．結構簡単に操縦できるらしく，お金を払えば実際に体験できるそうです．勿論やりました．確かに動きます．面白いです．
インストラクターの指示に従って川を進み，トンネルに入りました．中は先に来た人たちで溢れかえっていました．

なぜこう人が溜まっているのか疑問に思っていると，突然トンネルの入り口が閉められアナウンスが放送されました．　

「大変申し訳ありませんが，お客様方がこのトンネルから出る事は許可いたしかねます．扉が次回開くのは一年後です．多少の物資は既に運び込んでありますが，その補給は一切ございません．来年まで生き延びるのは至難の業かと存じます．
なぜこんな事をするのかを申しますと，私どもは人材を求めているからです．パラレルワールドへ赴き，一生その世界の管理をする人材です．お客様方のうちから10名が選ばれます．採用となった方につきましては，即座に新たな世界に転送いたします．お客様方が生き残るためにはこの10名に選ばれることが一番確実です．皆様どうぞ頑張って下さいませ．」

狭いトンネル内は騒然となり，物資をめぐる争いが起こりました．
脱出する手段を考えるにしても，とりあえず今日明日の食料が必要だからです．
友人も争奪戦に加わりましたが，食料などの必需品ではなく，どうでもいい物ばかり手にしています．
それを見て私はなぜかやる気を失いました．もうここで死んでも構いません．どうせ半数以上は道連れになりそうですし，暴力が場を支配するようになれば私に 勝ち目はありません．きっと明日には秩序など無くなります．私が食料を持っていても無理矢理奪われるでしょう．殴られるかもしれません．何も持っていない ほうがきっと安らかです．
私一人争奪戦から撤退し，誰もいなさそうな奥の壁際に行きました．同年代の人が二人いたので話しかけてみると，どうやら私と同じような考えのようです．仲良くここで死のうと決心したとき，私達３人が突如光に包まれました．

気付くと実家近くの見慣れた風景の中にいました．しかし何かが違います．家々の並びは記憶どうりなのに，その壁の色や屋根の形が違っています．表札も記憶と合致するものとしないものがあります．私はパラレルワールドに飛ばされたのです．

飛ばされた時に埋め込まれた知識によると，元の世界の人の半数はこのパラレルワールドにも存在するようでした．私は，元の世界で私と仲の良かった人 が存在するかどうかを確認しはじめました．親しい人達と引き離されたのは悲しくても，またこちらで仲良くなれれば慰みになります．少しギクシャクしていた 人ともやりなおせるかも知れません．でも，もしも誰も存在しなかったらどうしよう．もう二度と会えないのでしょうか．･･･嫌です．絶対嫌です．
期待と不安が募ります．